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ゴルフ小説|こちら港区ゴルフィ編集部 第10話 ~奇跡の3ショットとゴルフファン。そして、アメリカ大統領~

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厚い雲に覆われた空を見上げる。


曇り空。そして、絶不調……。


信じられないほど何もかも上手くいかない。


ドライバーは右に左にワイパー状態。


たまのフェアウェイもディボット三昧。


アイアンはガードバンカーに目玉でポン。


キックが悪くて深ラフ、ズッポリ。


パターはパンチで3パット行進。


こんなにヒドい日は久しぶりだ。


同伴の人間はバーディーラッシュ。


後姿はどこかで見たことが……。


ん? 黒いメットに黒いマント…なんかシューシュー言ってる?


まさか、ダース・ベイダー……?


いやいや、もう一度目をこすってよく見てみる。


え? 金髪? トランプ大統領?


いや、そんなに太ってない。むしろ細い。


金色頭で細いカラダ……C3PO?


いや、あれ、よく見るとケーシーか?


ケーシーがゴルフ? ウンチクだけじゃなかったの?


あれ? あれ?






「タジィ、聞いているかい?」


地の底からのような重低音ボイスが僕の耳に響く。


「はっ?」。僕は身震いして、目をそっと開けてみた。


目の前には、金ブチメガネに金色の上着の男。C3PO……いやいや、ウェブデザイナーのケーシーだ。メガネの奥で異様な光を放つケーシーの目を見て僕は思わずのけぞる。


「ど、どうしたんですか? ケーシーさん」


あまりの驚きに「さん」づけしてしまった。


「ケーシーでいい、何度も言わせるな」


敬称付け厳禁のケーシーにすばやく注意される。


「は、はい。ケーシー、どうしたんですか?」


横を見ると、バイトの愛ちゃんが呆れた顔で僕を見ていた。その顔を見て、相変わらずキュートだと思う。


「タジィさん、どうしたんですか、じゃないですよ。ケーシーの話の途中で寝ちゃったんです。妄想なんて信じられない。面白くてタメになる話なのに」


「えっ、寝ちゃったんですか……いや、ひどい妄想で……ダークサイドに落ちたかと思った。いやいや、えっと、それでどんな話でしたっけ?」


ケーシーは一度下を向き、メガネをクイッと上げると、ゆっくりと話し始める。


「ボクは最近こう思っている。ゴルフファンは本当に幸せだ。1年中、プロの試合を楽しむことができる。世界のゴルフシーンを追っていけば、ゴルフファンにオフはない。これだけ年中楽しめるのは、ゴルフを除いてはサッカーだけ。だが、サッカーにない楽しみがゴルフにはある。女子プロの充実だ。とくに、最近の日本の女子トーナメントは素晴らしい。先日の『ワールドレディス選手権のサロンパスカップ』。最終日のペアリングが素晴らしかった。これが予選じゃないところがいい。価値がある。なぜかわかるかい? タジィ」


ケーシーはそこまで一気に話すといきなり僕に話を振ってきた。
ついこの間まで無口だと思っていたケーシーだが、ガルシアのマスターズ優勝以降、ダム決壊で大量の水が溢れ出すかのように喋り続けている。そりゃあ、そんな喋りが毎日続けば、こっちだって眠くもなるってもんだ。


「い、いえ、よくわかりませんが……」。僕は頭をかきながら言った。


「そうか、残念だな。要は、作為的ではないというところに価値がある。予選なら主催者の思惑でペアリングが決まることがある。しかし、あの最終日は3ラウンドまでのスコアによるものだ。2年連続賞金女王”スマイルキャンディ”イ・ボミ、日本初登場で話題をさらった”セクシークイーン”アン・シネ、イ・ボミも認める日本のファッション・リーダー”キンクミ”こと金田久美子。この3ショットは奇跡と言ってもいい。まさに神の配剤だ。キンクミは見事なミニスカート姿だったが、その足の造形美は他の2人を凌駕していたと専門家筋は言っている」


僕は驚いた。ケーシーでも女性に興味があるのだ。
たしかにあの3ショットはすごかった。だからといって、「造形美」とか「専門家筋」ってなんの話なんだ。相変わらず訳が分からない人だと僕はぼんやり思った。


「撮影のためにLPGAから3人並んで歩いてくれと頼まれたとはいえ、日本女子プロゴルフ史上、ティーショット後にあれほど華やかだった一瞬はなかっただろう。ただのカワイ子ちゃんじゃなく、一人は2年連続賞金女王、一人は韓国ツアー3勝、一人はアマチュア時代から活躍して1勝、まだまだ伸びしろのあるゴルファーだ。あの一瞬が、前日までのスコアで生み出されたものだという奇跡が素晴らしい。もちろん、優勝争いならなおさらよかったが、そんなに贅沢を言ってはいけない」


いや、だれも言ってないですけどね、そんな贅沢……というか、この話の着地点、どこなんすかね。愛ちゃんはトップセールスを誇る営業マンのように、目を輝かせ、何度も頷きながら熱心に話を聞いている。ケーシーは続けた。


「というわけで、ゴルフファンは幸せだ。こうしたプロたちのお陰で様々な奇跡を目にすることができるからだ。ただ、ボクの敬愛する夏坂健先生は言っている。プロが全員、明日消えてなくなっても、日曜の午後、少し退屈するだけで世界情勢がこれ以上悪くなるものではないと。だが、この発言にはあえて異論を唱えさせていただこうと思う。世界一の権力者であるアメリカ合衆国大統領にゴルフファンは多い。アイゼンハワーもクリントンもブッシュも、オバマも、そしてトランプもゴルフファンだ。トランプはコースさえ所有している。ゴルフプロがいなければ、彼らのストレスは何処に向かっていたか。キューバかロシアか……それを考えるとボクは恐ろしい」


この人はまったくどこまで本気なのか。飛躍する思考についていけない。ボミちゃんからキューバ、ロシアって。まあ、プチ情報はありがたい。「ゴルフから世界平和を考えるなんて、田島さん、素敵!」なんてゴルコンで言われるかもしれない(いや、言われないな)。 とにかく、ケーシーは本当に不思議な人だと思う。

  

つづく





この記事を書いたライター

東龍太郎

東龍太郎

1年中カラダのどこかが痛い満身創痍の“へたれゴルファー”。アマならではの、ゆるいゴルフネタをご提供!

http://golfee.jp/
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